ホーム » 文武両道 » 第十二話:武道とは何か【会長 草原克豪】

第十二話:武道とは何か【会長 草原克豪】

第十二話:武道とは何か【会長 草原克豪】

第十二話:武道とは何か【会長 草原克豪】

船越義珍先生が本土に紹介した沖縄唐手は、その後、空手道となり、柔道や剣道などと並ぶ日本の武道として位置付けられることになりました。

では武道とは何でしょうか。武道という言葉は、昔から使われている古い言葉だと思われるかもしれませんが、実はこれは明治末期以降に広く使われるようになった言葉です。厳密に言えば、江戸時代にも武道という言い方があるにはありましたが、それはどちらかというと、今で言う武士道に近いものでした。今日使われているような意味での武道は、明治末期以降、つまり二十世紀になって登場した新しい用語なのです。

皆さんご存じのとおり、江戸時代の武士の子弟は、男子であれば、柔術、剣術、槍術、弓術、馬術などの武芸を必ず身につけなければなりませんでした。女子の場合は薙刀です。日本の武道はこうした武芸あるいは武術がもとになって誕生したものです。

明治維新で武士階級が解体されると、武士の嗜みだった武術も旧時代の遺物となり、それを学ぼうとする人もほとんどいなくなりました。

しかし、明治も中期になると、それまでの極端な欧化主義への反省もあって、日本古来の思想文化を再評価する動きが出てきます。そうした中で、柔術を学んでいた嘉納治五郎先生は、これを学校体育に取り入れたいと考えました。そこでそれまでの柔術に近代的なスポーツの考え方も取り入れて、安全に稽古や試合ができるようにし、これを「柔道」と称して指導を始めたのです。

その後、日清・日露の両戦争を経て、それまでの柔術や剣術が若者の心身の鍛錬に効果があることが広く認められるようになり、ついに中学校の体操の正課として認められるようになりました。名称も柔術から柔道へ、剣術から剣道へと変わって行きました

このように、明治になって一時は廃れた江戸時代の武術が、新たに近代的なスポーツの影響を受けて体系化され、安全に稽古や試合ができるようになりました。そしてそれを武道と称するようになったのです。

この武道という言葉の意味について、日本武道協議会が定めた「武道憲章」では、武道とは「日本古来の尚武の精神に由来し、長い歴史と社会の変遷を経て、術から道に発展した伝統文化である」とした上で、その目的を、「武技による心身の鍛錬を通じて人格を磨き、識見を高め、有為の人物を育成することを目的とする」と規定しています。

このことからも、武道の第一の特徴は「武技により心身を鍛錬する」ことにあると言えます。伝統的な武術を基盤にしつつ、武士道の伝統をもとに術から道へと発展してきたのが武道なのです。

第二の特徴は「体系化された技法や稽古法を有する」ということです。昔の武術のままでは危険なので、そこに近代スポーツの考え方を取り入れて、安全に稽古や試合ができるように工夫されているのです。

第三の特徴は「人格を磨く」ことを目的としていることです。武道の目的は相手に勝つことではありません。自分自身の心身を鍛え、「己に克つ」人間になることです。

1922(大正11)年に沖縄から本土に伝わった空手も、嘉納治五郎先生の後押しを得て、武道の仲間入りをしました。だから、先に挙げた武道の三つの特徴は空手道の特徴でもあります。空手道も究極的には、道場訓にもあるように「人格完成に努めること」を目的としているのです。

空手道はもっぱら大学生の間に広がりましたが、武道としての歴史が浅く、中学校などの正課にも採用されていなかったので、戦前においては柔道や剣道などのように広く普及するには至りませんでした。

しかし、戦後になって、船越義珍先生を最高師範として日本空手協会が創設され、さらに大学の空手道部の数も増えてくると、そこで修練を積んだ人たちが各地で道場を開設して指導を始めるようになり、今日の隆盛を見るようになったのです。

公益社団法人日本空手協会は内閣府認定の公益法人として品格ある青少年育成につとめております。
当会主催の全国大会には、内閣総理大臣杯、及び文部科学大臣杯が授与されております。