令和4年を迎えて

日本空手協会会長

　草原克豪

全国の会員の皆様、明けましておめでとうございます。

コロナ禍は新たなオミクロン株の発生もあり、依然として先行き不透明な状況にありますが、少しずつ明るい兆しも見えてきました。今年こそは国内外を問わず、会員の皆様と共に充実した活動が展開できる年となることを祈念してやみません。

人生においては、自分の意のままにならないことがたくさんあります。でも大事なことは、たとえどのような状況に置かれても、その中で今の自分に何ができるかを考え、工夫し、勇気を出して挑戦することです。実際、どのような分野においても、その頂点に立つ人は、それまでに様々な失敗や挫折を経験し、逆境を乗り越えて努力を重ねた人たちばかりです。

さいわい空手は非接触型の武道ですから、どんな状況にあっても工夫次第で続けることができます。一人でもできます。この特徴を活かして、自分なりの稽古を根気強く続けていくことが重要です。稽古の場は必ずしも道場だけではないのです。

武道においては、身体を動かす技術だけでなく、心を鍛えることも重要です。日本空手協会の空手は、自分自身を高めるための自己鍛錬であり、人格向上の手段です。敵を倒すことよりも、敵を作らないことが大事なのです。それが武士道の精神です。

武士の「士」とは学問や道徳を修めた人のことです。だから武士は、武だけでなく文をも兼ね備えた「文武両道の士」でなければなりません。この高い理想に向かって前進するためには、読書などを通じて自ら学び、人間としての教養を身につけることが重要になってきます。

年の初めにこれらのことを改めて確認し、そのうえで自分に合ったペースで稽古に励み、心と身体の状態を正常に保つよう努めてください。

皆様の道場が、会員同士の強い絆で支えられ、コロナ禍にあっても誰も孤立することなく、互いに寄り添いながら切磋琢磨し合える場として、これからも重要な役割を果たしていかれることを心から願っています。

（2022.1.1）